HND考察:名古屋を経ての鐘考察【②フィーバスがパリの人々に歌いかける意義】

名古屋を経ての鐘考察【②フィーバスがパリの人々に歌いかける意義】

 

【注意】この記事では、劇団四季ノートルダムの鐘のネタバレを含んでいます。
 
 

私、個人の考察です。

偏りや、個人的解釈を多く含んでいます。

ご了承下さい。

 

 

考察①の、クロパンの話題からの発展になるんですけれども。

 

フィーバスが「パリの人々よ!こんなことを許すのか!!」ってパリの市民に歌いかけるシーンの考察です。
あのシーンね、なぜフィーバスなのか、って考えると、「ん?なんでかな」って思いません?


だって、パリの市民に呼び掛けるのはクロパンでもいいじゃないですか。


フィーバスを助けて「英雄クロパンだぁぁ!」って宣言してるんだから、その続きで、「さぁパリの市民たちよ!立ち上がれ!」って叫んでもいいんじゃない?

 

その役目をフィーバスにさせた、ってのがクロパンの賢いところなんじゃないかなと、私は思ったんです。

 

あの瞬間の登場人物たちの立場を、市民の目線で整理すると…
■フロロー
〈過去〉市民に対してとても権力を持っている大助祭。その一声でパリ全体を燃やしてしまうほどの力を持っている人。
逆らうことのできない絶対的存在。でも、賢い人だし、間違ったことをするはずがない。怖いけれど言うことを聞くべき、尊敬に値する立場の人。
〈今〉エスメラルダに狂ってしまっていることを、市民は知らない。「大助祭があの女は魔女って言ってるんだから、あの女は悪だ!」と、市民たちは洗脳されている。「パリ中が燃えたのも、全部あの女が悪魔だからだ!大助祭様、正義を取り戻してください!」

 

エスメラルダ
〈過去〉道化の祭りで囃し立てた、天使のような女性。ダンスに魅了され、投げ銭もたくさん投げた。酒場でもアイドル的存在。
〈今〉こいつが黒魔術を使ったからパリが燃えた!……って大助祭様が言ってるんだから悪魔に違いない!殺してしまえ!

 

■フィーバス
〈過去〉誰もが惚れてしまう色男。みんな彼の目線を独り占めしたい。戦争で手柄を立てた偉大な隊長。かっこいい。
〈今〉ジプシーに成り下がったの?!なんで?あの女の魔術にかかったらしいよ……。でもいい人なのにねぇ。


考察①でも書きましたが、クロパンの目的は、ジプシーが誇りを持って暮らせる環境を作ることです。
今は、みんな捕まってしまっているけど、そこから助け出し、そして隠れずに堂々と暮らせる居場所を確保することです。
(と、私は思っています)

 

クロパンは待っていました。
絶好のチャンスを。
フロロー(ジプシーを忌み嫌う、絶対的権威)を倒し、市民全員にジプシーの存在を認めさせるチャンスを。

 

その、絶好のチャンスこそ、エスメラルダの処刑のシーンだと思うんですよね。

 

クロパンの目線であの処刑を見ると、

  • 絶対的権威だと思われているフロローが人の道を踏み外し、明らかな悪行を行おうとしてる。
  • 処刑を見るために、市民が集まってきている。市民の中でも、過激派にあたるような連中は絶対に来ている。

殺されるのは【罪のないジプシー】、殺しを行うのは【明らかに間違ったことをしている絶対的権威】

 

フロローを倒す……ジプシーへの偏見の源を倒す……のに、これ以上の舞台があるでしょうか。
市民全員が見守る中で、権威を持っていたフロローが悪魔になり、悪魔と思っていたエスメラルダが天使と認識されるようになる。

 

この舞台を完成させるには、英雄はフィーバスでなければならないと思うんです。
市民の憧れだった、市民の中の市民。

だけど今は、落ちぶれたジプシー。

 

両方の立場の橋渡しを出来るフィーバスだからこそ、市民とジプシーの溝に1本の橋を架けることが出来るんですよね。

 

これ、クロパンが市民に呼び掛けるのでは、弱い。
ジプシーの王様が仲間を助けるために、教会に噛みついただけになってしまう。
市民に対してフロローとは違った種類の求心力を持っていたフィーバスが語り掛けるからこそ、この騒動が終わった後のジプシーの生き方に変化が起こる。

 

それをクロパンは見抜いていたんだと思うんです。
だから、あのタイミングでフィーバスを助け、英雄に仕立て上げた。
あのタイミングとは、処刑を見るために市民全員が集まっていて、興奮が最高潮になっている、あのタイミングです。

 

奇跡御殿で捕まった時。
クロパンにはこの未来が見えていたんじゃないかな。
仲間は全員捕まっちゃったけど、とりあえず最初に殺されるのはエスメラルダだろう。だから、エスメラルダが生きてる間は他の仲間は大丈夫なはずだ。
エスメラルダが殺されるとしたら、フロローは大々的にやるだろう。
……ここまでは完全に読んでいたと思うんですよね。
だから逃げて、水面下でいろいろ画策していた。
クロパンなら、すぐにフィーバスを助け出すことも、他の仲間を助けることも出来たのかもしれません。
でも、ジプシーの未来の為に、最高のタイミングを待っていたんじゃないかな、と。

 

ここでひとつ疑問なのは、エスメラルダが捕まってから、殺されるまでにどれくらいの時間があったのかということ。
カジモドが大聖堂を抜け出して奇跡御殿にたどり着いたのは夜。そしてフロローが攻めてきて、みんなが捕まったのもその夜。
バスティーユ牢獄は大聖堂からそんなに遠くない場所にあるようなので、最速で、エスメラルダが殺されたのはその翌朝ってこともあり得る。

まぁ、何日も置いておくわけにいかなかっただろうから、翌朝説が有力ですが、ジプシーの女が処刑されるっていう噂が街に広がって、市民が集まってくるためには、もう少し時間が必要じゃないかなぁとも思います。


……と、ここまでが今回の考察です。

 

クロパンの目的は果たされたのかな。

その後のジプシーの処遇については描写がありませんが……

 

あと、この話をしていていつも思うのが、たったひとつだけ残念なのは、クロパンはエスメラルダは救えなかったんですよね!

 

嗚呼………

゜゜(´O`)°゜

クロパンの心中や如何に………

 

さて。

 

フィナーレ最後のこのあたりのシーンね、語りつくせないほどいろんなことが詰まっているんですよ!!

 

今回の考察の続きとして語るなら、「カジモドが大聖堂から飛び降りる時のロープの話」があります。


エスメラルダを助けるために大聖堂から飛び降りる時のロープ。上手の前タワーから垂らされている、あのロープね。

 

誰が持っていると思います?

 

クロパン役の会衆なんですよ!
あの時はグレーローブを着ているので、会衆だと思うんですが、クロパン役の会衆がロープを持っています。
カジモドが命を預けている、あのロープを。
カジモドに翼を与える、あのロープを。
クロパン役が!


奇跡御殿では、クロパンはカジモドのことを認めていませんでした。だから、仲間に入れようともしない。(カジモドもそれを望んでいるわけではないからですが)
でも、カジモドが、命を懸けてエスメラルダを助ける覚悟を決めたとき、その命を預かるのがクロパン役なんです!!!

 

深い!!!

 

こうゆう仕掛けが山ほど詰まっているから、この作品の考察はやめられませんね………
沼だ。

ということで、今回はここまでです。

 


今回も、お読みいただき、ありがとうございました✨✨✨

 

名古屋を経ての鐘考察【目次ページ】はここです。

https://naomi-loves-math.hatenablog.com/entry/2019/05/21/030123